RIKEN BRAIN SCIENCE INSTITUTE (理研BSI)

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2010年12月24日

過去の経験が新たな状況下において意識下の行動に影響を与えることを発見
−場所細胞の発火パターンは時間的に未来に起きる状況を「前」再生している−


RIKEN-MITセンター及びPicower 研究所の研究者達は、世界で初めて、過去の経験を通じて得た知識が新たな状況下においてどのように行動に意識下で影響を与えるかを明らかにしました。我々の過去の経験がどう未来の選択に情報を与えるかという問いに光を投げかけたこの研究は、出版に先立ちNature 2010年12月22日号のオンライン版に掲載されました。



先行研究では、げっ歯類が新しい場所を探索すると、学習と記憶の場である海馬の神経細胞が順に発火するということが分かっていました。場所細胞と呼ばれるこれらの神経細胞は、空間内での動物の動きを反映した特別な発火パターンを示します。発火する神経細胞から記録された時間特異的なパターンを見て、研究者はある時間に動物が迷路のどこを走っていたのかを当てることが出来ます。



RIKEN-MITセンターのジョージ・ドラゴイ博士研究員と利根川 進 同センター長兼Picower研究所教授らは、初体験の迷路のような空間的に新しい経験をしている間に発火する神経細胞の発火パターンの一部がその経験の前に既に観察されるということを見つけました。この結果は、元々我々が持っている経験が、状況が新しくなったときに経験することに影響するという現象を神経回路レベルで説明します。これは、同じ状況に陥った時に、なぜ個体ごとに異なる脳内表現が形成されてなぜ同じように反応しないのかという問いに部分的に答えを与えるものです。





一歩先を考える

マウスが迷路の中で止まってじっとしているとき、脳内では直前の経験が再生(replay)されていると言われています。このとき神経細胞も走っているときと同じパターンで発火します。脳内再生の場合と違って、新しい迷路を走る前に起きる現象であるため、今回MITの研究者らが見つけた現象は前再生(preplay)と呼ばれています。本研究の結果から、じっとしているときに海馬内で神経回路が時間軸に沿った発火パターンになるように動的に変化して、将来起きる関連した経験を記銘する手助けになっているということが示唆されました。


今までの研究は新しい出来事や空間そして状況といったものの前に起きている先行知識の脳内神経表現をよく見てはきませんでした。今回の研究は、新しいけれどもよく似た経験に対して事前の知識へ個別にアクセスすればどういう応答が起きるかを予想する研究への手掛かりになります。





本研究はアメリカ国立衛生研究所(NIH)の支援により行われました。






論文情報

“Preplay of future place cell sequences by hippocampal cellular assemblies”

George Dragoi and Susumu Tonegawa

The Picower Institute for Learning and Memory, RIKEN-MIT Center for Neural Circuit Genetics, Department of Biology and Department of Brain and Cognitive Sciences, Massachusetts Institute of Technology, Cambridge, MA.

Nature 22 Dec. Advanced Online Publication.